群青の夜の羽毛布 (幻冬舎文庫)

群青の夜の羽毛布 (幻冬舎文庫)

 すべてを自分の思い通りに進めようとする暴力的な母、それに従う姉、母に反抗する活発な妹、そして家族によって廃人にされた父。これだけで十分恐ろしい小説になるであろうが、更に姉と表向きフツーの学生の恋愛を通して「家族」というものを描いていて、ただただ「女」というものの恐ろしさを感じる小説だった。
 崩壊しきっていながら、それでもなおいびつな形で成立している家族、というのはこの類の小説の王道な気はするが、ここまで震え上がらせられたのは初めてだった。確実に他人事なのであるが、どこか嘘とはいいきれない、そんな危険性を平凡な家族すらも現代は持っているのではないか。