あるべき場所 (新潮文庫)

あるべき場所 (新潮文庫)

1話目の「空室なし」は原田宗典らしいトホホな大学生の話。短編全部このような世界で通されるのかと思っていたが、いい意味でそんな期待を裏切られた。1話目、2話目までは作者が得意とする憎めないトロいやつらの話で、幸せとはいえないけど決して不幸でないシアワセのかけらを味わえて読んでいるこちらがうれしくなる。一方、3話目は作者の観察眼の鋭さによって「あるべき場所」にない「もの」についての考察から、物語が広がっていく。そして、4話目ではそれまでのほのぼのした世界を打ち破る。1話目や2話目のさみしさとは違う、もっと恐ろしいものが漂い始める。この作者の陽と影を見られる作品だった。

にんじん (岩波文庫)

にんじん (岩波文庫)

黙視してはいけない家族がそこに描かれているのだが、淡々とそれを描く作者によってそんなことは自然の中にとかされてしまう。ギリギリのところで、しかしたしかに成立している家族。感情の表し方が下手なわけじゃなく、わざとそうやってふるまっているわけじゃないんだけど、愛しているのに大嫌い。愛しているから憎しみをもつ。

ナンバ走り (光文社新書)

ナンバ走り (光文社新書)

星の王子さま―オリジナル版

星の王子さま―オリジナル版

「甘え」の構造

「甘え」の構造

ナンバ走り…理論的に古武道の技術を理解しても、素人がそれを実践するのは難儀そう。逆にナンバ走りなど一連の動きを理論的に知らなくても、一線で活躍しているスポーツ選手が体得しているのは注目に値した。

星の王子様…作者のように空を飛びたい。そんな気持ちになる話だった。もしかしたら空は宇宙以上に想像力に富んでいるのかもしれない。訳者あとがきにもあったが、大人と子供が同じラインで読める作品。

甘えの構造…心理学的見地から「甘え」について考察する著者の視点が興味深い。

スマイルBEST シカゴ [DVD]

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マルクス・エンゲルス 共産党宣言 (岩波文庫)

マルクス・エンゲルス 共産党宣言 (岩波文庫)

野火(のび) (新潮文庫)

野火(のび) (新潮文庫)

シカゴ……久しぶりに映画館で観たかったなって思う映画だった。カメラワークが優れている。また、CGではなく、舞台装置に金をかけているのも好感が持てた。

共産党宣言……現代において、この本を読んで感動のあまり共産党にのめりこんでしまう人がいるとすれば、その人はあまりにも被害者意識が強いのだろうな。ひとつの考えとして消費するくらいでいいんじゃないか。

野火……ノーコメント